一般社団法人
日本創傷・オストミー・失禁管理学会
理事長  真 田 弘 美

 医療水準の向上は、国民に長い寿命をもたらしましたが、逆説的に、医療の複雑化、急速な高齢化により、さまざまな疾病を抱えたまま暮らす人々が増えてきています。それらの人々は、創傷や失禁など、生活すること自体が原因となる症状を有するリスクが高くなっています。

 そこで、創傷(特に褥瘡、糖尿病性足潰瘍など、生活に起因するもの)、オストミー、失禁に対するケアに関する学術的進歩を主眼に置いた学際的取り組みを強化することを目的に、日本創傷・オストミー・失禁ケア研究会がこれまで担ってきた役割を発展させるため、このたび学会として活動することが平成20年度総会で承認されました。これに則り、平成21年5月10日、日本創傷・オストミー・失禁管理学会に正式移行いたします。協会であったためにET看護師、WOCN、皮膚・排泄ケア認定看護師のみで構成されていた研究会に、医師、看護師、医学・看護学研究者、工学研究者など、様々な領域にわたる学会員を広く募ることで、学際的ネットワークを構築し、予防・ケア・治療に関する学術基盤をより強固にすることが可能となり、新たな管理手段の提案や臨床エビデンスの蓄積などが見込まれ、ひいては国民の健康レベルの向上につながると強く確信しております。

 本学会移行には大きく3つの目標があります。1つは看護学を基盤とした、生活に起因する創傷・オストミー・失禁の問題点を解決するための生活ケアの充実を目指すことです。そこには、専門性向上のための研究基盤の向上が不可欠であり、それを布石とした生活の支援看護技術の向上が必須であります。他学会との大きな相違は、あくまでも療養者の生活を支援するという看護学的視座に依拠した学会であるという点です。

 2つ目は診療報酬獲得を見据えた、長期的展望に立った活動の促進です。褥瘡ハイリスクケア加算を獲得するために作製された報告書は、ET/WOC協会からではなく、日本看護協会からの委託事業として提出されました。当該目的で活動している看護系学会等社会保険連合が2005年に設立されており、現在では、学術団体として、診療報酬への提言を行うには、この看保連に所属する必要があります。しかしながら、現在の協会は学会でないために加盟することができず、積極的な発言が困難な状況です。卑近な例としましては、糖尿病合併症管理料が認められましたが、これは日本糖尿病教育・看護学会が看保連に加盟していたことが大きな要因といえます。診療報酬獲得自体が最終的な目標ではありませんが、診療報酬を得ることで看護師の活動の幅が広がることに異論はないと思われます。また、今後、ドレッシング材の選定や非観血的デブリードメントの施行など、在宅への皮膚・排泄ケア認定看護師の進出を鑑みると、責任領域の拡大を視野に入れた学会としての活動が必須となることが予測されます。

 そして3つ目として、世界の看護学発展の布石になることです。本学会が、専門的技術を有する看護師のブラッシュアップ、学術水準の向上に基づいた診療報酬の獲得、患者のQOLの向上を明確に、そして強力に推し進めることにより、日本ばかりでなく、世界における看護学専門領域のリーディング学会として位置づけられることこそが、日本の看護学の学問レベルの向上とともにアジア、そして世界の医療に対しての多大な寄与となると確信しております。

 以上のような理念の下に、学術活動を通して、創傷・オストミー・失禁に関する管理を有効、かつ安全に行うことを目的に、邁進することが大きく望まれております。皆様に於かれましては何卒この趣旨をご理解頂き、ご協力をお願い申し上げます。